令和6年3月
礼文町教育委員会
礼文町教育委員会
Ⅰ 教育行政の基本姿勢
令和6年第1回礼文町議会定例議会の開会にあたり、礼文町教育委員会の所管行政の執行に関する主要な方針を申し上げ、町民皆様並びに町議会議員各位のご理解とご協力をお願い申し上げます。
人生100年時代となった現在、人口減少や少子高齢化の進行、情報技術やグローバル化のさらなる進展の中で、人々の価値観やライフスタイル、ワークスタイルが大きく変化しています。
このような変革の時代においては、私たち一人ひとり、そして社会全体が、答えのない問いにどのように立ち向かうのかが問われています。
このため、未来を担う礼文町の子どもたちに対して、他者を尊重する心育み、自己の存在を肯定的に捉え、様々な人々と協働しながら持続可能な社会の創り手となる資質や能力を育む教育を推進することが重要です。
加えて、人と人とのつながりの希薄化や、人口減少に伴う地域活力の低下などを踏まえ、地域住民が共に学び、支え合いながら、個人の幸せと社会の良好の双方が満たされる「ウェルビーイング」の実現に向けた生涯教育の展開が求められています。
Ⅱ 重点施策の展開
次に、令和6年度において、重点的に取り組む施策を申し上げます。1 全ての子どもたちの可能性を引き出す教育の推進
第一は、全ての子どもたちの可能性を引き出す教育の推進についてです。
令和5年度に策定した「礼文町教育推進計画」に基づき、教育現場と認識を共有し、連携を密にしながら、これまで築かれてきた特色ある「礼文の教育」について、時代の変化に対応させつつ、さらなる進展を目指すことが極めて重要です。
このため、幼児教育においては、参加者間の交流活動や親子の共同体験などを主眼としつつ、就学期に至るまで親子揃って様々な本に慣れ親しむための支援などを通じて、幼児期の子どもの特性に応じた家庭教育を確立するきっかけづくり、並びに家庭以外における親子のふれ合いを深める場づくりを推進します。
義務教育においては、児童・生徒の一人一台の学習用端末のさらなる効果的・実践的な活用を通じた「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現をはじめ、「確かな学力の向上」や「運動習慣、生活習慣・食習慣の改善」につながるよう各学校において策定している「学校改善プラン」の確実な推進に努めます。
また、外国語教育に係る指導体制の充実や、地域において外国語に慣れ親しむ機会を提供するとともに、これまで中学生の英語に限定していた検定試験助成の科目追加や対象者の拡充、礼文町教育研究会を中心に取り組んでいる「礼文検定」に対して、必要となる支援を行います。
特別支援教育においては、児童・生徒一人ひとりのニーズに応じた適切な指導及び必要な支援を行うため、今年度は3校において3学級の特別支援学級を設置し、その充実と円滑な推進を図ります。
2 「礼文型教育連携」を中心とした多様な学習機会の保障
第二は、「礼文型教育連携」を中心とした多様な学習機会の保障についてです。
本町におきましては、平成18年度より礼文町教育研究会が中心となって「保・小・中・高の教育連携」に取り組んでおり、学校種間の垣根を越え、子ども・教職員・保護者を連携の中心に据え、地域の協力を得ながら関係者が一丸となって子どもを育てることを目標として掲げております。
このため、各学校において独自色を持ちながらも、共通認識の下で取り組んでいる「礼文学」に対して必要となる支援を行うほか、小学校においては、きめ細やかな指導や支援を行うため、地域住民の理解と協力のもと、協働活動推進員や学校教育支援員を配置します。
また、地域住民が主体となる出前講座の実施をはじめ、学校・家庭以外の第三の居場所となる「放課後子供教室」を通年で開設し、地域における安心・安全な学びの拠点としてさらなる内容の充実に取り組みます。
さらに、中学校区に1つ設置している「学校運営協議会」において、小中学校の保護者や地域住民を交え、学校と地域のさらなる連携の推進と、学校が抱える様々な課題解決が図られるよう協議会の機能強化を目指します。
遠距離通学が必要なる児童・生徒につきましては、スクールバスによる輸送体制の維持や遠距離通学費の助成を実施するとともに、礼文町通学路交通安全プログラムによる関係部署・機関との連携を通じて、児童・生徒が安心・安全に通学できる環境を確保します。
学校教育法に定められた経済的な就学支援を必要とする家庭につきましては、児童・生徒が支障なく、明るく楽しい学校生活を送ることができるよう、規定の支援を行うほか、昨今の物価上昇による家計負担の増大を鑑み、全ての家庭に対して給食費の一部助成を行います。
学校における働き方改革につきましては、現在、第2次働き方改革アクション・プランに基づく取り組みを鋭意進めており、引き続き、全ての教員が心身ともに健康を維持し、様々な教育活動の中で子供と向き合う時間を確保できるよう、必要な措置を講じて行きます。
3 人の心がふれ合うコミュニティ活動の展開
第三は、人の心がふれ合うコミュニティ活動の展開についてです。
人生100年時代を迎え、生涯学習の重要性が一層高まる中、地域のあらゆる人々が学びを通じて、人づくり・つながりづくりに携わることができる機会が求められており、生涯学習を通じた個人の成長と地域コミュニティを支えるため、継続的かつ安定的な取り組みが必要とされています。
このため、第4次社会教育推進計画を基軸に、社会的な要請と地域のニーズ・課題を適切に把握し、町内外の多様な人材とのつながりを保持しながら、地域の教育資源を最大限活用した社会教育を展開します。
また、地域の誰もが心豊かに日々を過ごすため、優れた芸術文化に触れる機会を確保し、地域の文化団体への活動支援を行うとともに、子どもの体力向上や成人の健康増進などを図るため、町内のニーズや課題に応じたスポーツ・運動事業を実施します。
特に、中学校の部活動が地域に移行していくことを見据え、地域において青少年が芸術文化・スポーツに親しむことができる環境を構築するため、学校や関係諸団体との協議を進めて行きます。
ふるさと礼文の貴重な宝物であり、町民共有の財産である文化財につきましては、国・道・町それぞれの指定区分に応じて適切な保存管理を行うとともに、学校における郷土学習への活用をはじめ、地域住民や本町を訪れる多くの皆様に島の歴史と文化を実感していただくため、多様な媒体を通じた周知活動と普及活用事業を一体的に実施します。
4 地域と一体となった魅力ある高校づくりの実現
第四は、地域と一体となった魅力ある高校づくりの実現についてです。開校以来、地域で唯一の高等教育機関として、多くの有用な人材を輩出してきた礼文高校につきましては、入学者を全国から募集する「最北れぶん留学事業」の開始により、その存在が益々重要となっています。
このため、高校の魅力をさらに高めるため、礼文高校魅力化推進協議会での議論が基となる各種施策について、町内外の関係者・有識者と一体となって、継続的かつ発展的に取り組みます。
入学者の全国募集につきましては、「地域みらい留学」における説明会をはじめ、オープンスクールや専用ホームページなどを活用して、全国の中学生に対して、最北の島の高校生活を具体的に発信するとともに、町内から進学する中学生に対しましても、オープンスクール開催時に合わせて体験入学を実施するなど、高校の魅力を実感できる取り組みを進めて行きます。
高校生活における利便性向上と家庭の経済的負担軽減につきましては、全ての生徒を対象に、通学や昼食、教科書や学習用端末購入に係る費用を助成するとともに、卒業後の進路選択の幅を広げるため、海外交流や資格検定受験に係る費用の助成を行います。
留学生の生活基盤である学生寮につきましては、生活指導員を始め、高校や保護者との連絡調整役となるコーディネーターを配置することにより、生徒の安心・安全な生活を担保し、学業との両立を支えて行きます。
以上、令和6年度に取り組む重点施策を申し上げました。。
Ⅲ むすび
少子化が進む今後の社会情勢を展望したとき、本町の子どもたちが学校・家庭・地域において質の高い教育を受ける保障とその継続が求められており、行政・教職員・保護者・地域住民四者の連携協力がこれまで以上に重要となっています。また、地域住民が心安らかに暮らし、生きがいと潤いある生活を送るためには、人々の連帯や心のつながりを維持創出していく活動が重要であり、学びを通じた喜びや発見、新たな出会いなどにより、自己の成長から他者への還元という好循環を生み出すことが可能となります。
礼文町教育委員会といたしましては、「可能性を引き出す教育の推進」、「学習機会の保障」、「コミュニティ活動の展開」、「魅力ある高校づくりの実現」に対する町民皆様のご期待に応えられるよう、あらゆる機会において関係機関との連携強化を図りながら、「未来を担う人づくりと文化にふれあう町づくり」を目指し、誠心誠意取り組んで参りますので、町民の皆様、並びに町議会議員各位の特段のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げ、教育行政執行方針といたします。