|
|
雪が融け、北国に春の訪れを告げるのは、ここ礼文島では“蕗の薹(フキノトウ)”です。淡く初々しい浅黄色の若い葉に包まれたフキノトウが残雪から顔をだすとき礼文島の花の季節が静かに幕をあげます。
あたりが枯れ草色のなか、明かりをひとつ黄色に橙すのは“黄花の甘菜(キバナノアマナ)”、湿原では“水芭蕉(ミズバショウ)”が春を誇るかのようです。
やがて、紅葉色の“礼文小桜(レブンコザクラ)”、クリーム色の“礼文敦盛草(レブンアツモリソウ)”、黄色がまばゆい“二並草(フタナミソウ)”や“礼文金梅草(レブンキンバイソウ)”など礼文島でのみ見ることができる花達が咲き誇り、純白の絹を纏う“礼文薄雪草(レブンウスユキソウ)”が清楚で気高いその姿をみせるころ、高山植物たちが『花の浮島礼文島』にシンフォニーをかなでます。
礼文島の高山植物のその清楚なたたずまいは訪れる総ての人に感動を身近なものにしてくれます。なぜなら少しだけ自分の足を動かすことにより、本州のアルプスや北海道の大雪山でしか見られない可憐な花々と向き合うことができるからです。
しかしながら、あまりにも身近に接することができるために、ともすると私達が忘れてしまいがちなことは、礼文島の高山植物をはじめとした植物達がとても貴重な財産であり、彼女たちは、私たちよりずっと昔の、はるか氷河時代からこの礼文島の住民であるという事実です。
礼文島の花々は決して、その存在が安穏ではないのです。単に人間にとり目に映り易い華やかな花だけではなく、目立つことなくひそやかに咲く花に対しても人は目を向け、総ての植物に手を差しのべなければならないのです。
|
|